高金利通貨の選び方で変わる外貨預金の可能性
外貨預金の中でも、新興国通貨を活用した運用は、円預金では得られない金利収入を目指す選択肢として注目されています。とくに、メキシコペソや南アフリカランド、トルコリラといった通貨は、日本と比べて政策金利が高く、その分預金金利も魅力的に映ります。
しかし、金利の高さだけで通貨を選ぶのは危険です。通貨の安定性、政治リスク、インフレ率、そして為替の変動幅など、複数の視点から総合的に判断する必要があります。例えば、メキシコペソは資源国通貨であり、米国との経済関係も強いことから、相対的に安定性を持ちやすい一方で、原油価格の影響を受けやすい傾向があります。
一方、トルコリラは一時期非常に高い金利で注目を集めましたが、政治不安やインフレの加速、中央銀行の独立性の揺らぎなどが重なり、通貨価値の急落が何度も起きています。このように「高金利=安全で儲かる」という図式は成り立たないため、情報収集とリスク認識が何より大切です。
為替レートの変動が資産に直結する以上、外貨預金を行う際には中長期の視点で通貨の信頼性を評価することが基本となります。
日本円との利回り差は大きいが為替リスクに注意
新興国通貨の魅力は、なんといっても預金金利の高さです。日本円の普通預金金利が年0.001%程度であるのに対し、メキシコペソの外貨預金では1年で5〜8%の金利がつくこともあります。期間や金融機関によってはさらに高い利回りを提示しているケースも存在します。
とはいえ、金利だけで実質的な利回りを判断するのは早計です。例えば、預入時よりも満期時に為替が大きく円高になっていた場合、高金利で得られた利息分が為替差損によって帳消しになる、あるいは元本割れを起こす可能性があります。
為替の変動は経済だけでなく、地政学リスクや外部要因によっても大きく左右されます。たとえば南アフリカランドは鉱物資源価格や金融政策の動向に加えて、周辺諸国の政情不安や自国内の社会問題の影響も受けやすい通貨です。
為替リスクを避けるために「為替ヘッジ付き商品」を選ぶことも検討材料ですが、その場合はヘッジコストが発生し、利回りが低下する可能性があります。外貨預金は基本的にヘッジなしで提供されることが多いため、為替の方向感や政策動向に目を配ることが求められます。
利回りを比較する際は、税引後の金額も見逃せません。外貨預金で得た利子には20.315%の源泉徴収税が課され、さらに為替差益にも課税対象となる場合があるため、実際に手元に残る利益をしっかり計算することが重要です。
運用前に確認しておきたい注意点と落とし穴
新興国通貨の外貨預金を始める前に、いくつかの注意点を押さえておく必要があります。まず第一に、預金保険制度(ペイオフ)の対象外であるということです。円預金であれば1,000万円までは保護されますが、外貨預金にはこの制度が適用されません。万が一、預け先の金融機関が破綻した場合は、元本保証がないというリスクを認識しておくべきです。
また、通貨の流動性にも注意が必要です。日本では取り扱いのある外貨が限られており、新興国通貨は一部のネット銀行や証券会社でしか取り扱われていないことがあります。加えて、為替のスプレッド(買値と売値の差)が大きく設定されているケースもあり、これが実質的なコストとなって利益を圧迫することもあります。
さらに、定期預金に関しては中途解約できない場合や、解約時に大きなペナルティがかかるケースもあります。柔軟な運用ができると思って預けたはずが、思わぬタイミングで資金を動かせず、機会損失を被る可能性があるのです。
新興国通貨の外貨預金は、高金利という魅力の裏に、為替変動・信用リスク・制度の制限といったさまざまな落とし穴が存在します。リターンを追うあまり、仕組みを十分理解しないまま始めてしまうことのないよう、慎重な情報収集とリスク許容度の見極めが求められる投資手法といえるでしょう。